先日、『地球の歩き方 ペトラ遺跡とヨルダン17-18』の取材でヨルダンを訪れました。
ヨルダンといえば、いまだ混乱の只中にある中東のど真ん中。
「治安は大丈夫なの?」と多くの人から聞かれました。
結論から言うと、2016年7月現在、治安は悪くはありません。
もちろんシリア、イラク国境など気を付けなければならない地域もありますが、
最低限の注意さえ払っていれば、安全に旅をすることができます。
これだけ周囲を危険な国に囲まれて、
よくもこれほど安全を保てるものだとつい感心してしまいます。
今回は断食月(ラマダン)の最中の取材でした。
ラマダン中の旅、なかなかタフです。
日中、地図とにらめっこしながら灼熱のアンマンを歩き回ったのですが、
水分を補給しようとしても、人前では飲めないので、
商店で買ってビルの陰など人目のないところでこっそり飲みます。
(まれに、同じようなことを考えた横着なヨルダン人に遭遇します)
お腹がすいても、レストランは日が沈むまでは閉店しているので、
ホテルへ行くのですが(ホテルのレストランのみ営業)、
周りに高級ホテルしかない場合、次のエリアまで泣く泣く我慢。
喫煙もできず、ラマダン中は何かと苦労します。
そんなラマダン中の楽しみといえば、イフタール(断食明けの食事)。
日の沈む時間に近づくと町は騒然とし始め、
レストランで、あるいは各家庭でイフタールの準備が進められます。
テーブルに並んだご馳走を前に今か今かと合図を待つ人。
家族のために大量の食材や飲料を運んでいる人。
国中が固唾を飲んで、日没の知らせを待っている様子は何とも興味深いものです。
そしてついにモスクから日没を知らせるアザーン(礼拝の誘い)が鳴り響きます。
まずは水分をゆっくり胃に流し込み、一斉に食事が始まります。
ラマダン期間、高級レストランなどは特別メニューを用意しているところもあり、
一度は豪華なイフタールビュッフェを試してみるのもおすすめです。
さて、今回の取材ではヨルダンをひと通りまわりましたが、
その中で特に印象的だった町がありました。
首都アンマンから1時間弱で行けるサルトという町です。
古代から農業で栄えた町で、最盛期はオスマン帝国時代。
1921年にトランス・ヨルダンの首都に選ばれ、
そこからアンマンに遷都するまでの25年間、華々しい繁栄を誇りました。
現在は静かな古い町といった佇まいですが、
オスマン時代の伝統的な美しい町並みが今なお保存されており、
ただ通り過ぎるにはあまりにももったいない町です。
旧市街の中心にある広場では、
昼間から民俗衣装を身に着けたアラブ人男性たちが、
マンカラと呼ばれる伝統的なゲームに興じています。
広場から続くハンマーム通りにはスーク(市場)が広がっていて、
石造りの建物に木造の重厚な扉という昔ながらの商店街が見られます。
特産の果物やアラビー菓子を分けてくれたり、
写真に優しく応じてくれたりと、店主は皆ほんとうに親切。
まるで20世紀初頭のヨルダンに迷い込んだかのような不思議で懐かしい感覚を覚えます。
ペトラや死海以外にもこんな魅力的な町があるヨルダン。
ぜひ一度は訪れてみてください!
IWAKI